HOME > 記事一覧 > 相続税の税務調査について
| 税務調査

相続税の税務調査について

みなさん税務調査というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。

ある日玄関のチャイムが鳴るとそこにスーツを着た人が数人いて「〇〇国税局の△△と申します。」といったものをご想像される方もいるのではないでしょうか。

今回はそんな相続税の税務調査についてお話ししたいと思います。

 

1.なぜ税務調査が行われるか

相続税は納税者が自ら正しいと思う税額を申告し、納税を行う「申告納税制度」という制度を採用しています。

この提出した申告書が税法という法律から見て正しければ何ら問題は生じません。

ただし、中には納税者が税額を過少に申告しているのではないか、申告が必要なのにされていないのではないかと思われる事案もあります。

税務調査はこのような事案で税金の申告が正しく行われているか確認をするために行われます。

なお、税務調査には「任意調査」と「強制調査」があります。

任意調査とは相続人や税理士に事前に通知が行われ、日時等が決定された後に行われ

る一般的な税務調査を言います。

強制調査とは冒頭のような突然、国税職員が来るようないわゆるマルサによる税務調

査です。よほど悪質でない限り強制調査は行われませんのでご安心ください。

 

2.税務調査の実施時期

相続税の税務調査は申告書を提出してから1年~2年で行われることが多いです。

実施の時期としては8月~12月が多いです。

これは税務署の事務年度や職務実績評価、繁忙期が関係しています。

税務署の事務年度は7月~6月とされており、職員の異動も7月に行われます。

また、税務署職員の職務実績として12月までの実績が重要視される現実があるようで、2月~3月は所得税の確定申告時期となり繁忙期となります。

このような要因もあり特に税務署からみた重要案件の税務調査は8月~12月に行われることが多いです。

もちろん8月~12月以外にも行われますが、新人職員の研修のための税務調査や税務署職員の処理件数不足のための税務調査の割合は8月~12月に比べると高いと感じられます。

なお、相続税の増加を行う事が出来る期限(時効のようなもの)は、相続税の申告期限から原則5年、悪質なものは7年です。

この期限までに税務署などから通知等が届かなかった場合は税務調査は出来なくなります。

 

3.税務調査の流れ

実は税務署は税務調査前にさまざまな作業を行っております。

市区町村は死亡届を受理した後、記載内容を税務署に通知することとなっており、税務

署はそれをもとに不動産情報、KSKシステム(税金に関する情報を管理するシステム)

などにより相続税の申告が必要と思われる人を絞り込みます。

そして申告が必要と思われる人に相続税についてのお尋ねを送付します。

この時点で既にある程度の財産は把握していることになります。

その後、相続税の申告書が提出されると申告書のチェック、金融機関や保険会社などか

らの情報収集・分析、反面調査などを行い必要な場合は相続人(税理士がいる場合は税

理士)へ事前通知を行い日時が決定され税務調査となります。場所は相続人のご自宅と

なり、ご自宅での税務調査は基本1日、税務署職員は基本2名で来ます。

なお、納税者の個別事情により税務調査の日時の変更は可能です。

最近では新型コロナウイルスを考慮して状況により税務調査を延期したり、電話や書

面による行政指導を行い実地調査は行わないケースもあります。

ご自宅での税務調査では午前に被相続人の生前の状況、相続人の経歴などが質問され

ます。午後は相続財産に関する質問や財産現物の確認がメインとなります。

その後、税務署と納税者又は税理士とのやり取りが行われ、税金の是正が無い場合はそ

のまま終了、必要があれば修正申告(税金の訂正手続き)などを行います。

トータルで短くても1か月はかかります。

 

4.税務調査となる割合

国税庁公表の税務調査件数等のデータによると税務調査となる割合は9%~12%となります。

相続税の申告が必要な被相続人の約10人に1人に対して税務調査が実行されています。なお、令和2年度についてはコロナウイルスの影響もあり約4%となっています。

ただし、実際は財産の多さ、確実に記載漏れの財産があるかにより異なります。

一般的には3億円以上の財産がある場合は税務調査となる可能性が高くなります。

 

5.税金の訂正が必要となる割合

税務調査が行われた場合に修正申告等の税金の訂正が必要となる割合は年度によって

異なりますが80%以上となります。これは他の税目に比べると高いです。

理由としては、財産を所有していた被相続人自身が亡くなっていること、法人税や所得

税のように帳簿が無いため財産の把握や収入支出の内容を把握しづらいこと、相続と

いう課税のタイミングが1回しかないことなどがあげられます。

そのため、税務署もあの手この手で相続財産の実態把握に努めます。

 

6.相続税調査の重点事項

税務調査では特に下記項目について論点となります。

①    名義預金及び上場株式等

相続税の税務調査の最大の論点です。

名義預金とは被相続人の預貯金であるが名義が親族となっている預金です。

税務調査で特に問題となるのが、親族が贈与で受けたものであるのか、名義預金なのかです。預金情報からは資金移動しか分かりませんので判断しづらい論点となります。そのため、税務署としては実地調査が必要となります。また、所得に対して預貯金が少ない、ご親族の預貯金が多い場合も論点となりやすいです。

ご相続人が所得に対して多額の上場株式等を所有している場合も論点となります。

②    生命保険

税務署は保険会社へ照会すれば生命保険に関する情報を取得することが出来ます。

また、詳細は割愛しますが保険金の入金が無い場合でも課税対象となることがあります。

ご相続人の中にはこのことが分からない方又は税理士へ伝え忘れてしまう方もおります。

そうしますと税務署は比較的容易の相続財産の漏れを把握できることになります。

③    不動産の評価

不動産の評価は多くの論点があり相続税の申告をご自身で行う場合は間違いが生じやすいです。また、税理士でも相続税の申告実績が少ない場合は評価を間違いやすいです。

④    海外財産

最近、税務署が力を入れている項目です。

海外との情報交換制度もあるため税務署も海外財産を把握しやすくなっています。

⑤    中小企業のオーナー

中小企業を経営されていた方であれば、中小企業の株式や会社への債権・債務などの確認がされます。

 

7.相続税の税務調査になりやすい方

以下の方は相続税の税務調査になりやすいです。

①    富裕層

税務署は財産金額に応じで重要度を分別しています。

課税対象が3億円以上になると税務調査になる割合が高くなります。

②    税務署の把握しやすい財産の申告漏れがある方

預貯金、上場株式、生命保険などの情報は税務署が把握しやすいです。

そのためこれらの財産の申告漏れがある場合は税務調査となりやすいです。

また、特に預貯金が多い方については相続税の税務調査の最大の論点である名義預金があるため税務調査の可能性は高まります。

③    税理士を利用しないで申告された方

相続税の申告は一生に一度行うかどうかです。

また、不動産の評価や名義預金など専門的な項目も複数あります。

そのためご自身で申告された場合は誤りが生じやすくなってしまいます。

④    相続税の申告が必要なのに申告していない方

無申告といいます。無申告を許した場合、課税の公平性が保てませんので税務署としても力を入れている項目となります。

もちろん意図せず無申告となってしまう方もおりますが税務署からは指摘を受けやすいです。

 

8.税務調査に入られないために

税務調査後、修正申告を行った場合は増加した相続税の他に加算税や延滞税という税金が別途生じます。

また、悪質と認定された場合にはより税率の高い重加算税や延滞税が課され、配偶者の税額軽減などの一部の優遇措置が利用できなくなる可能性が高くなりますので、思わぬ財産が見つかったということ以外は良いことはございません。

そこで税務調査に入られない又は入られた場合に思わぬ税金が生じない方法を記載します。

①    書面添付制度を利用する

書面添付制度とは、申告作業をした税理士が、どのような書類を確認し、どのような税務処理を行ったのかを書面にまとめて申告書に添付する制度です。

書面添付制度の利用がある申告に対して税務調査を行おうとする場合、税務署は税務調査の事前通知前に税理士から意見聴取をしなければならず、その結果疑義が解決すれば、調査省略又は簡単な実地調査で済むことになります。そのため税務調査対策に一定の効果があります。

②    相続税に強い税理士を利用する

上記に記載しましたが相続税の税務調査となるのは税務署が気になる点があるためです。そしてそれは税務調査となることが決まってからでは対策が出来ない項目ばかりです。

つまり相続税申告書の作成時点で預金の流れの確認、被相続人の生活状況の確認を行うなど税務署が行う作業を行うことが将来加算税などの追加の税金を払う事を未然に防ぐ対策となります。

それは相続税の申告実績がある税理士でないと出来ない事です。

ぜひ相続税に強い税理士をご利用頂ければと思います。

 

※本記事は掲載開始日の法令・情報に基づいて作成されたものです。

税制改正その他の事由により現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと細心の注意を払い執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合も当法人は一切の責任を負いません。



お問い合わせ

page top