書面添付制度について
一生に1回・2回あるか無いかの税金の申告が相続税の申告です。
そんな相続税の申告を終え、相続手続きが大変だったことを忘れかけてきた頃にやってくるのが税務調査です。税務調査では被相続人の生前の状況や相続財産について聞かれることになり相続人の方にとっては大きなストレスとなります。
(相続税の税務調査の詳細についてはこちら)
そんな出来れば来て欲しくない相続税の税務調査の対策になる制度がございます。
それが「書面添付制度」です。
「書面添付制度」とは、税理士法第33条の2に規定された「計算事項、審査事項等を記載した書面の添付」と、税理士法第35条に規定された「事前通知前の意見聴取」の総称です。
条文は下記の通りです。(読み飛ばして頂いて構いません。)
第三十三条の二
税理士又は税理士法人は、国税通則法第十六条第一項第一号に掲げる申告納税
方式又は地方税法第一条第一項第八号若しくは第十一号に掲げる申告納付若し
くは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成したとき
は、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省
令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。
第三十五条
税務官公署の当該職員は、第三十三条の二第一項又は第二項に規定する書面(以
下この項及び次項において「添付書面」という。)が添付されている申告書を提
出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所
を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第三十条の
規定による書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該
税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与え
なければならない。
簡単に言いますと、税理士が作成した申告書について、作成した税理士がどのような項目について、どの資料を確認してどのように検討・判断・調整したのか、どのような相談受けたのかを記載した書面を申告書に添付して提出します。
そして、その提出された申告書について税務署において疑問点がある場合は、税理士のみに対してヒアリングが行われ、その結果その疑問点が解消された場合には、税務調査が省略されたり簡易な実地調査となります。なお、疑問点が解消されない場合には税務調査となりますが書面添付制度を利用しない場合に比べればはるかに税務調査へ移行する割合は低くなります。
さらにもう1点のメリットとしては、上記の税理士に対するヒアリング時に相続財産の漏れなどにより追加の相続税が生じたとしても、その追加の相続税に対する加算税が原則生じないということです。
加算税とは税金の申告した後に税務調査などが行われ追加の相続額が生じた場合や相続税の申告義務があるのに申告期限までに申告を行わず期限後に申告を行った場合などに発生する罰則のような税金です。追加で生じた相続税の10%~15%が生じるイメージです。
相続税の税務調査は実施された場合は80%以上の割合で追加の相続税が生じます。そのため加算税を回避することが出来るメリットは非常に大きいです。
上記の通り書面添付制度は税理士がいることを前提とした制度のため、納税者ご自身で申告を行う場合は利用することが出来ません。
書面添付制度のメリットは上記の通りですがデメリットもございます。
それは相続税申告のご料金が基本あがることです。
上記の通り書面添付制度は申告書作成時にどのような資料を確認したのかなどを書面にまとめる必要があり書類作成に時間を要します。そのため基本的にどの税理士に依頼したとしても追加の報酬は生じます。また、申告書作成に時間がかかることもデメリットです。
上記の通り書面添付制度は税務調査への対策として確実に一定の効果があります。
デメリットよりメリットの方が大きい感じる方につきましては、ぜひ書面添付制度を採用している相続税に強い税理士へご依頼頂ければと思います。
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