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名義預金について

掲載開始日:令和4年11月25日

今回は相続税申告書作成時、税務調査時に特に論点になりやすい「名義預金」に関して説明します。

 

1.名義預金とは

名義預金とは「名義上の所有者」と「実質の所有者」が異なる預金をいいます。

よくあるパターンとして、被相続人が将来孫へあげるために孫名義の口座を作成し、その口座にお金を積み立てていたが、孫へ預金を贈与する前に相続が発生してしまった場合です。

この場合、預金通帳に記載されている名義人は孫ですが、被相続人の預金を贈与するという意思と孫の預金をもらいますという意思がございませんので、贈与契約が成立していないことになり、預金は実質の管理・所有者である被相続人の遺産として取り扱われます。

相続税上は当然被相続人の遺産となるので課税の対象となります。

遺産分割においても名義預金であれば被相続人の遺産となるため、遺産分割協議や遺言の対象財産となります。

被相続人に子がいれば孫は代襲相続、遺言書による遺贈、孫養子に該当する場合などを除き、原則相続人となりませんので、上記事例の名義預金は孫のものとはならず、相続人である配偶者や子供などの相続人間の遺産分割協議により承継先を決めることになります。

つまり、被相続人の孫への贈与は果たされずに終わることになるわけです。

また、相続人が複数人いる場合にある特定の相続人名義の名義預金が見つかった場合、その名義預金の名義人である相続人が預金取得を主張すると他の相続人との平等性が損なわれ争いとなることもございます。

その他、遺産分割協議後に多額の名義預金が判明した場合、遺産分割協議をやりなおすか否かの検討も必要となります。

税法上、遺産分割協議をやりなおした場合、相続税の再計算は行わず遺産を多く取得することになった相続人に贈与税が生じるなど新たに税金が生じるため注意が必要です。


2.税務署にみつかるの?

相続税の申告の相談を受けるときに名義預金の説明をすると、よく「それって見つかるの?」、「うちは資産家でないから見つからないでしょ?」と言われることがあります。

少し古いですが、国税庁「平成28事務年度における相続税の調査の状況について」によると申告漏れ財産のうち、預貯金の占める割合は33%、有価証券(上場株式等)は17%、その他財産(保険契約等)は37%(一部記載のためすべて足しても100%になりません)となっております。

名義財産には名義預金の他にも、名義有価証券や名義保険契約というものもあります。

その他財産の内容にもよりますが、預貯金・有価証券・その他財産と名義財産の指摘を受ける可能性のある財産の申告漏れ財産全体に占める割合は87%にもなるため、名義財産の指摘は相当多く行われていると想定することが出来ます。

特に預金は被相続人名義の預貯金は基本的にはどの方も申告されるので、申告漏れ財産として指摘を受けた預貯金33%の多くは名義預金の指摘と想定されます。

また、弊社が今まで受けてきた税務調査でも預貯金の指摘の無かった方はあまりおりません。

つまり、名義預金は税務署に充分に見つかる可能性のある論点なのです。


3.税務署の調べ方

税務署の名義預金の調べ方ですが、まず国税調査官は税務調査の準備として職権により被相続人及び相続人の預金口座情報を約10年間分収集し下調べを行います。マイナンバー、国税手続きの電子化に伴い金融機関の口座情報等が全てデータとして国税へ提供される事も今後見込まれます。

預金口座情報以外にも国税総合管理(KSK)システムにより過去税務署へ提出した確定申告書、法定調書、財産債務調書等の所得や財産に関する情報は一元管理されており、所得・財産の実額及び見込は簡単に把握・計算されます。

被相続人及び相続人等の生年月日や婚姻年月日などの個人情報も当然把握可能なので、扶養親族がどのようになっているかも簡単に把握されます。

不動産情報も市役所や登記情報から取得可能なので不動産の所有状況はもちろん、抵当権の登記を通じて借入額も比較的簡単に把握されます。

既にお分かりのようにあらゆる情報を税務署は得ることができます。

このような情報をまとめていく段階や税務調査時に以下のような事由が判明します。

①   相続人名義の口座に被相続人と同じ銀行印が使用されている

②   相続人が相続人名義の口座の存在を知らない

③   相続人名義の口座が旧姓名義のままになっている

④   通帳、銀行印が被相続人の自宅に保管されている(税務調査ではご自宅の金庫も見られます)

⑤   子供が遠方に住んでいるのに口座の取扱い支店が親の居住地の近く(お正月に帰省した時にわざわざ近くの金融機関で口座開設するか など)

⑥   口座開設時の筆跡が被相続人の筆跡と同じ

⑦   贈与契約書の有無(名義預金なのか贈与財産なのかの判断基準)

⑧   贈与税の申告の有無(名義預金なのか贈与財産なのかの判断基準)

⑨   相続人の所得に対して多額の相続人名義の口座がある(理由のない多額の専業主婦の預貯金や年齢では通常ありえない額の預金の所有)

⑩   被相続人の所得、生活費、所有財産に対して理由がつかないほど預貯金が少ない

⑪   不明瞭な高額出金がたくさんある

⑫   高額出金時に相続人の財産が増加している

⑬   その他

上記のような事由が判明すると税務署は名義預金の疑念を抱きより厳密な事実確認が行われることになります。

このような手順を経て「申告漏れ財産」が増加することになるのです。

4.名義預金にも対応する税理士へ依頼を

ここまで述べてきたことで相続でも、相続税でも名義預金は重要な論点となり得ることはご理解頂けたかと思います。

この重要な論点である「名義預金」ですが、税理士の中には預貯金の通帳を一切確認しない税理士や名義預金の説明すらしない税理士もおります。

ご通帳を開示頂くか否かは、最終的にはお客様のご判断となりますが後の税務調査で多額の「申告漏れ財産」の指摘を受け、適正に申告をしていれば本来納税する必要の無かった罰則としての税金である加算税や延滞税の納税を望む方はいないと思います。

論点をしっかりと理解し、適正な判断を行える税理士を選んで頂いた方が相続税額、税務調査が入ることのストレス、加算税・延滞税回避の面から良いと思います。

 

 

※本記事は掲載開始日の法令・情報に基づいて作成されたものです。

税制改正その他の事由により現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。

※この記事は専門家監修のもと細心の注意を払い執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合も当法人は一切の責任を負いません。

 

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